第89回日本感染症学会 西日本地方学術集会で研究成果を発表しました

【演 題】自然界には存在しない非酸化物セラミックの人工合成とそれを含む水溶液の抗菌特性と安全性評価
【概 要】AMRは国内に留まらず世界的な問題となっている。抗生物質の代わりとなる耐性化の起こらない新規抗菌薬が求められている。今までの低分子量から高分子量に至る抗菌薬とは異なり,今回 60g/mol程度の超低分子量セラミックス粉末を投入した水溶液(セラミック水)が各種バクテリアに対して優れた殺菌能を有することがin vitro試験で分かった。このセラミックスは燃焼合成という方法で合成され,天然には存在しない炭化チタン(TiC)のような非酸化物セラミックスからなる。これを入れたセラミック水には,各種ラジカルが含まれる。特に炭化物セラミックスの構成元素である炭素(C)に由来するメチルラジカル(・CH3)がヒドロキシラジカル(・OH)と共にESRにより同定された。このラジカル産生に必要なエネルギーは導電性を有するTiCから与えられる。このセラミック水は,大腸菌や黄色ブドウ球菌,緑膿菌,虫歯菌を始めとしてグラム陽性,陰性にかかわらず抗菌活性を示し,今まで生き残った細菌は見つかっていない。安全性に関して遺伝子毒性としてAMES試験および小核コメット試験を行い,いずれも陰性(無毒性)であった。またin vivoとして,ラットによる経口投与毒性試験(2g/kg/dayの単回投与および1g/kg/dayの90日間反復投与)における血液検査や組織検査でも異常は見出せなかった。齧歯類(ラット)および非齧歯類(ビークル犬)を用いた血中投与毒性試験(4ccおよび2.5cc/kg/shot/dayの14日間反復投与)でも,同様に異常は検出されなかった。今後,抗菌活性のより詳細な作用機序解明と,病原菌に対するセラミックス水の非耐性化確認実験および抗生物質の効かない耐性菌での殺菌実験などをさらに進める予定である。
【主 催】日本感染症学会
【日 時】2019年11月7日〜11月9日
【場 所】静岡 アクトシティ浜松